回復ストーリー 『寸原の大ケヤキ』

寸原の大ケヤキ回復事業

兵庫県丹波篠山市黒田、県内で三番目に大きい通称「寸原(ずんばら)の大ケヤキ」の回復作業を進行中です。

寸原の大ケヤキは今も昔も地域のみんなから愛されています。
60年ほど前、木登りをしによく遊んでいたと地元の方は話しておられました。幹周8.5m、樹高15mの大ケヤキは枝ぶりからみても子どもたちにとってこれ以上ない遊び場です。当時、木の周辺は今のような駐車場で開けた感じではなく、背の高い笹などが深く生い茂っていたそう。ケヤキはまっすぐ伸びるものですが、なぜか寸原の大ケヤキは横に横にと伸びていく珍しい木であり、ケヤキさんと地域の人たちに呼ばれて親しまれてきました。今では折れてしまっている枝も天高く伸びていて衰弱の気配など微塵もなかったと子ども時代の記憶を話してくれます。

平成4年に大規模な造成工事が行われて以来、急激に弱ってしまいました。

ウロの部分には雨が入らないようにコンクリートを流し、屋根をつけてたりもしていましたが原因は別のところにありました。

原因は工事で数十トン盛られた土でしたが、柔らかくほぐそうと、重機で根の上に乗り入れさらにはトラクターで耕したため重機の重みで土が硬く締まり、根が窒息してしまったためでした。

良かれと思い様々な策を講じたことも、ケヤキにとっては却って悪影響を与えてしまっていました。

まずは大量の盛り土を地元の人たちにも協力してもらい退かす作業を行いました。幸い、不治の病気にはかかっておらず、地形的にも手入れがしやすい環境が整っていました。とはいえ、元はトラックで運び込まれた大量の土も根を傷つけるわけにはいけませんので重機で取り除くことはできません。硬く踏み固められた土を手作業で丁寧に取り除いて離れた場所に移動させます。

 

覆い被せられた土を取り除いた後は、エアースコップというコンプレッサで土中に空気を送り込む。そして又余分な土を取り除く地道な作業を繰り返し少しづつ根を再生させていきます。

当初、四年計画で始まった大ケヤキの復興作業だが、樹木へのダメージは深刻であり現在も継続中です。

10年かけて弱った木は最低でも10年かけないと戻りません。人の手を加えすぎず、元の自然な姿に戻すことが大切です。

現在は回復の兆しを見せています。ここ数年で弱り切っていた枝が上を向いて成長し始め、目に見えて成果が出てきています。

この木を治療することでいろんな人とつながれました。写真や資料を残してくれる人。地域の人。お金には変えられないものを得たと強く感じています。オカルト的だけどもそんな人をつないでくれるようなパワーが寸原の大ケヤキにあるのかもしれません。

瀕死の状態1

瀕死の状態2