青野ダム沿いの「ソメイヨシノ」てんぐ巣病とウメノキゴケ

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【樹木医と「花診」巡り(5)青野ダム沿い】

兵庫県三田市内で桜が見頃を迎えた。ピンク色が鮮やかに野山を彩る「ソメイヨシノ」は、おおむね30年前に市内各地に植えられたとされる。人間で言うと30代は働き盛りだが、この種はちょっと病弱で、60歳ごろには枯れてしまう恐れがあるらしい。健康具合はどこで分かるのだろう。そこで樹木医の小西朋裕さん(51)に診てもらいながら歩く“お花診”巡りをしてみた。

■立ち枯れ増加の恐れ

樹木医の小西朋裕さん(51)と青野ダム(末)を訪れた。1988年のダム完成後に県が植えたとみられる湖畔の桜並木が水面をピンク色に染めている。

適切に切られず朽ち果て、キノコが生えた枝=青野ダム

そばに近づくと、てんぐ巣病がまん延し、幹の表面は「ウメノキゴケ」に覆われる。立ち枯れした木もあった。「これから枯れる木がもっと増えるでしょう」

荒れたのにはさまざまな要因が絡み合う。連載4回目で書いたように、てんぐ巣病の「タフリナ菌」は水辺を好み、ダムのほとりにある桜は格好の標的だ。

また、桜は光を求めて扇形に枝を広げるが、並木の間隔が5、6メートルしかなく、互いの枝が干渉して日陰となり、エネルギーを生み出せない。長い年月で付近に雑木林ができたことも日照不足に拍車を掛けている。

さらに枝を剪定する際は、枝と幹のつなぎ目を切り、かさぶたのように樹皮が切り口を巻き込めるようにしないといけないが、枝の途中で切断していて樹皮が傷口を覆えない。木を腐らせる菌で空気中に漂う「木材腐朽菌」が入れば簡単に枯れかねない状態という。

ダム湖のほとりを彩る桜

小西さんが静かに語る。「花を咲かせる木を植えた以上、人に喜んでもらえる木に育てないといけない」

病気や環境の変化は予測しにくいとはいえ、もっと慎重に手入れできなかったのか。管理する県宝塚土木事務所三田業務所によると、てんぐ巣病対策で枝を落とした上、台風で折れた可能性がある。担当者は「限られた予算の中で剪定は及第点と考えている。いつまでも桜を残したいので作業を研究したい」とした。

桜を生かすも枯らすも、人の手に掛かっている。(門田晋一)

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